むずむず足症候群
「むずむず足症候群」とは?
下肢に不快な感覚(むずがゆい、引っ張られるような感じ、何かが這っているような感じなど、その方により表現は様々です)が起こり、脚を動かしたいという耐え難い衝動にかられる症状を特徴とします。まれに腕に起こることもあります。
こういった感覚の症状は夕方から夜にかけて、じっとしているときに出現し、脚を動かすと軽くなります。お昼間に活動しているときにはほとんど起こりません。
このため就寝前にお布団に入ってじっとしているときが一番良く起こる時間帯となり、このような症状のために寝つきが悪かったり、何度も目覚めたりしてしまい、不眠の原因となります。睡眠が十分取れない結果、起きている時にひどく疲れたり、眠くなったりすることがあります。
むずむず足症候群を診断するためにはどのような検査が必要ですか?
この病気にかかっているかどうかの診断には、特別な検査は必要ありません。症状と経過を詳細にうかがい、似たような症状を起こす他の病気を適切に除外することでほぼ診断は可能です。
この病気であることが確実である場合には、血液検査などにより腎臓の機能や血液中の鉄欠乏の状態を把握することで、むずむず足症候群を起こしうる病気がないかどうか調べる必要があります。
患者さんによっては、一晩睡眠検査によって他の病気がないかどうかを確認することお勧めする場合もあります。
原因
根本的な原因は現在も完全には解明されていません。
妊娠中の方(妊娠最後の2~3ヶ月では、約15%の方に症状が見られます)、鉄欠乏性貧血の方、腎不全で透析中の方、末梢神経に障害のある方に起こりやすくなります。
症状
①下肢の異常感覚と動かしたくなる衝動
じっと座っていたり寝転んだりしたときに、足(膝から下の部分)にむずむずするような、何かが這うような気持ちの悪い感覚が起こってきて、動き出したくてたまらなくなります。
ときには、足以外の場所にも起こることがあります。こういった異常な感覚と動かしたくてたまらない衝動は、休んでいるときや活動していないときに起こり、動くことによっておさまります。
②症状の夜間の悪化
この気持ちの悪い感覚と動かしたくなる衝動で困るのは昼間よりも夜間に多いのが特徴です。このため、寝つきが悪くなったり何度も目が覚めてしまったりすることが多くなります。
昼間、わけもなく疲れていたりだるさがあったりする場合もあります。
発症年齢
中高年の方に最も多いとされていますが、小児にも起こる場合があります。
お子さんは症状をうまく説明できず、「成長痛」と言われたり、「落ち着きのない子供」と考えられたりしている場合があります。
経過
人によって様々で、病気に波があることもあります。毎晩起こって困る方もあれば、時々しか起らないという方もおられます。
食事
健康によいバランスのとれた食事をとりましょう。カフェインを含むものやアルコールの摂取は症状を悪化させやすくしますので避けましょう。鉄不足にならないように、鉄を多く含む食物をしっかり摂りましょう。
◎カフェインを多く含むもの
コーヒー・紅茶・緑茶・コーラ・チョコレートなど
◎鉄分を多く含むもの
大豆、ほうれん草・あさり・しじみ・いわし・ひじき・もずく・レバー・切干大根など
睡眠
むずむず足症候群の方の中には、夜遅くに床につき、朝も遅めに起きるほうが良い睡眠がとれる人もいます。ただし、昼夜逆転してしまわないように注意しなければなりません。
体操
背中を壁につけてまっすぐ立ち、そのまま椅子に座るように膝を曲げていくといった運動を就寝前に数分間すると、眠りやすいことがあります。やりすぎは逆に症状を悪くさせますので適度にとどめましょう。
その他
歩く、ストレッチ体操をする、熱い(人によっては冷たい)お風呂に入る、マッサージ、カイロで温める(人によってはアイスノンで冷やす)、他のことに集中する、足枕をつかう、指圧をおこなうなど、ご自分にあった症状の緩和方法を工夫しましょう。
薬物療法
鉄やある種のビタミンが足りないことによって症状が起こっている場合には、これを補充することで症状の改善が得られることもあります。特に、鉄欠乏症貧血が原因になっているむずむず足症候群では鉄剤の投与を最初に試みます。
原因が不明な場合や、鉄の補充で十分な効果がない場合には、下記のような2種類の薬を用います。
①パーキンソン病の薬
特にドパミン受容体作動薬(ドパミンアゴニスト)と呼ばれる種類の薬剤が有効です。これを症状の出現する数十分から1時間ほど前に服用することで、下肢の異常感覚の出現が抑えられる場合があります。またこのタイプの薬剤は、むずむず足症候群に大変多く見られる周期性四肢運動を起こりにくくさせる作用もあります。ここで注意していただきたいのはパーキンソン病の薬が効くとは言っても、むずむず足症候群とパーキンソン病は全く別の病気であるという点です。むずむず足症候群ではパーキンソン病のように身体が硬くなったり、歩きにくくなったりすることは通常ありません。また、これらの薬剤のむずむず足症候群のための量は通常はパーキンソン病そのものに対しての量よりもずっと少量ですみます。
②けいれん止めの薬
特にクロナゼパムという薬剤が好んで用いられます。ドパミンアゴニストとともに用いられたり、夜間にのみ症状が出る方には単独で用いられたりします。精神安定剤としても用いられることがある薬ですので、寝つきもよくしますが、翌日の眠気やふらつきといった副作用が起る場合もあります。