不眠

不眠でお悩みの方へ

意外かもしれませんが、『不眠症』という病気はありません。
「眠れない」という状態は、「頭が痛い」「お腹が痛い」のような「症状としてとらえて対処方法を考えなければ、適切な治療は難しいとお考えください。
ここでは、当院での「不眠」の考え方と対処方法についてお話しします。

不眠とはどういう状態ですか?

単に睡眠時間が短いことを「不眠」と呼ぶわけではありません。
睡眠時間がいくら短くても、それによって困ることがなければ、病気として扱う必要はないのです。
実際には、寝つきが悪かったり、眠っている途中で目が覚めたり、朝早く起きてしまったりした結果、日中に気分がすぐれない、身体がだるいなどの症状を自覚している場合に「不眠」と感じます。
つまり、「夜眠れない」と「日中の体調が悪い」という2つの状態が揃った時に「不眠」と感じるのです。

最適な睡眠時間は何時間くらいですか?

これは言い換えると、「日中に体調が悪くならない睡眠時間はどの程度か」ということになります。実は、この疑問に対する適切な答えはありません。非常に個人差が大きく、その方によって様々です。
大体、6時間未満の睡眠時間では多くの方が日中の体調不良を自覚されるといわれていますが、5時間未満でも平気な方もいれば、8時間以上眠らなければすっきりしない方も大勢いらっしゃいます。

睡眠時間グラフ

「不眠」の原因にはどのようなものがありますか?

不眠恐怖症イメージのイラストどんな方でも、一度は寝ようと思っても眠れない日があるものです。こういう日の翌日は頭がぼんやりして身体もだるく、いかにも睡眠不足という感覚があります。しかし、普通は「今日は睡眠不足だから今晩はよく眠れるだろう」と考えます。大抵はその予想の通りその夜はよく眠れて、やがて眠りづらい日があったことも忘れてしまいます。
しかし、中には翌日も同じように寝つきが悪いという場合もあります。このとき、「ひょっとするとこれは明日も眠いのではないか」という悪い予想が頭に浮かびます。悪い予想をして緊張しながら就寝するので、この日はかなりの確率で寝つきが悪くなります。予想が当たってしまったことになり、
次第に「明日も眠れないに違いない」「やっぱり眠れなかった」という確信に変わっていきます。
このように、悪い予想とそれが的中することによる悪循環を繰り返しているうちに、眠ろうとすること自体が恐怖の対象となっていきます。

精神生理性不眠

このような状態の方にとって必要なことは、「眠れる」という経験を積み重ねて、自信をつけることです。「眠れる」という体験を積むために必要であれば、睡眠導入剤を用いることも全く問題ではありません。
悪循環を断ち切るための道具と考えて使用する分には、睡眠導入剤は大変有効な手段です。
「睡眠導入剤を使えば眠れる」という自信がついてから、薬を減らしていけばよいのです。

その他にはどのような不眠の原因がありますか?

忘れてはならないのは、うつ病による不眠です。うつ病では、気分の落ち込みや食欲の低下など他の症状を伴うことが多いのですが、中には「眠れない」という症状が中心になる場合もあります。

うつ病では十分な休息と抗うつ剤による薬物療法が必要です。精神科医以外には判断は難しい場合もあります。ご本人は意識しておられないような生活習慣が不眠の原因になっている場合もあります。
夜眠りにくいからといって長時間のお昼寝や二度寝で補おうとしている場合には、その習慣そのものが夜間の不眠の慢性化を招いている場合があります。実際に睡眠日誌を記録していただくと、誤った睡眠習慣を客観的に見ることができ、役に立ちます。
定期的に服用しているお薬や嗜好品、現在かかっている病気なども不眠の原因になっていることがまれならずありますので、心当たりの点は担当医にお伝えください。

特殊な不眠の原因として、むずむず足症候群という夜間に下肢の耐え難い異常感覚が起こって足を動かしたくてたまらなくなる病気があります。この病気についてはこちらをご覧下さい。